軽井沢・吉村山荘


昨日は、真冬に戻った様な寒さと雪が降る中、軽井沢の吉村山荘を見学する機会に恵まれました。
芸大の何学年か上の人たちまでは、吉村順三さんにこの建物を案内して頂いたそうですが、私が学生の頃には既に退官された後で、この建築を見学するのは、私には初めての体験です。今でも、吉村さんご家族がお使いになっている別荘ですから、めったに見学させて頂ける機会はありません。webでお見せする写真もここまでです。

玄関建具の子扉をくぐり、少し急な階段を上り、振り向いた瞬間に目の前に広がる景色は言葉になりませんでした。25年余り、図面を暗記するほどに眺め続け、写真を見ながら頭の中に焼き付いていた情景が目の前に広がっています。


食堂のベンチに腰を掛け、見え隠れしながら居間の窓の向こうに広がる景色、書斎から居間を見下ろした時の空間の広がり・・・全ては、頭の中に描き続けていた情景ですが、建物と森に包まれるような感覚は、実際にその建物の中にいなければ感じる事が出来ない、とても心地よいものでした。素朴な板張りの内装で、今の建築雑誌にあるようなお洒落な建物ではありませんが、当たり前の佇まいがとても気持ちよく、肩肘を張ることなく、素直に「建築はこれでいいんだ」と思えました。


今朝、昨日の感動を忘れない内に・・・と、改めてJAの吉村順三さんの作品集を眺めていました。図面を見ながら、もう一度建物の中を歩きつつ、写真を見ながら、昨日感じた包まれるような感覚の余韻に浸っています。

それにしても、今一度平面を見直しても、真四角なプランを2:1のコンポジションに分け、中心をはずしたその位置に1階からの階段が上り、居間や食堂のオープンなスペースと寝室や水回りとのバランスが、それ自体がモンドリアンのの絵画のように美しい平面です。
いくつもの角を持ちながら、対角線にずれつつ展開していく間取りの奥行きと心地よさ、手に届くような・・・しかし広がりを感じる断面、を思い出しながら図面の中を歩き回っています。