通奏低音

プレゼン週間の講評会、最終日は、業界紙分析と店舗出店計画の講評でした。


最初は、情報・社会の動きにアンテナを張る習慣を身につける為に、業界新聞に目を通して、テーマとなるキーワードを追いかけ分析する・・・という授業。発表者が全員、眼鏡に襟付きのテーラードで、「エコロジー」「ネット販売」「百貨店」「対面販売」「新素材」「チャイナ+1」・・・・等の、テーマキーワードを傍らに置いて、CNNヘッドラインニュースをイメージさせるプレゼンテーションでした。

学生の発案による演出との事でしたが、発表内容もヘッドラインニュースそのままでした。事象の羅列だけで、何を言いたいのか、全くワカリマセン!

現代は「多様化の時代」と言われ、全く違う色々な価値観が散らばり、色々な事象が等価値でばら撒かれます。一世代前の様に、メディアが、時代のイデオロギーや価値観を横糸として色々な出来事を関連付ける事はしません。「時代の価値観の共有」という横糸が無い中で、雑多に散らばる事象を読み解くには、それそれの個人の価値観を横糸にするしかありません。


続くプレゼンテーションは、3年生と2年生ファッションビジネス科の学生の「ファッション店舗出店計画」でした。
ショップイメージ・コンセプト・ターゲット・ラインナップ・ショッププランニング・ショップアイテム・ロゴタイプ・最後にフィージビリティースタディー・・・・横文字ばかり並べましたが、要は「どんな店をつくるか」の発表でした。
ファッションの店を出すには、こんな事を考えていかなければならない、という基礎知識を身につけるのが授業の焦点だから仕方無いのですが・・・この発表には、私は、全くコメント出来ませんでした。何故なら、その内容に「個人の趣味嗜好」を越える物が感じられなかったからです。それに対してコメントしても、相手の趣味を批判する事にしかなりませんから・・・・。
「こんなファッションテイストの若者向けの店を作ります。」「くつろげるライフスタイルの店を演出します」といった内容が殆ど・・・可能性を感じたのは「お直しをテーマに新しいビジネスモデルの店を作ります。」「アトリエ・製作現場を身近に意識できる店です。」でしたが、まだまだ「テイスト」「趣味嗜好」から抜けだしてはいません。

カレーが大好きでも、毎日食べていたら飽きてしまいます。「通奏低音」を持たない「テイスト」「趣味嗜好」だけで出来ている店が、一時の話題にはなっても、すぐに飽きられて入れ替わるのは必然です。今はやりの「セレクトショップ」「ライフスタイルショップ」も「趣味嗜好の領域」ですから、同じ宿命を持っています。


ハイファッションが何故ハイファッションであり続けるか?
それは、其々のシーズンに発表されるコレクションに「テイスト」はありますが、其々のブランドに「通奏低音」として変わらずに流れる「意識」があるからです。・・・あえてコンセプトとは言いません。言い換えるなら「個性をつくる価値観」

尤も・・・専門学校の若い学生が自信を持って「通奏低音」を奏でるのが、あり得ない事なのかもしれません。でも、いくら色々な勉強や経験をしても「自分の価値観」に問いかける意識がなければ、どんな経験をしても全てが無駄です。
「デザイン学校」の学生たるもの!・・・そこにこだわり続けて欲しいと思います。・・・それがデザインだからです。


通奏低音」・・・こんなことばかり考えていると、気が滅入ってきます。そんな気持ちを切り替える為に、「年中行事」や「祭り」と言った「ハレの場」があります。ファッションには、全てを楽しんでしまう、明るさ・軽やかさ・ノリの良さも大切です。

今週末は「衣デザイン展示Labo」学校最大のお祭りです。学生達も楽しそうに準備し、私がアドバイスしたインスタレーション展示も何とか間に合いそうです。

皆さん、是非遊びに来てください。お楽しみに!