装苑賞・・・無邪気な楽しさ

今日は、新宿・文化服装学院装苑賞のファイナル・公開審査会を見てきました。
というのも、信州大学建築学科の学生二人組みが、装苑賞のファイナルに残り、縁あって多少のアドバイスをした私と松本衣デザイン学校の校長が、彼らに招待して頂きました。私たちの隣の席には、彼らの建築の先生だった坂牛さんも一緒でした。

ファッションの世界だけに、会場演出も、審査員の登場シーンも、賞品も、建築の世界とは違って華やかです。大勢の立ち見の人もいて、ものすごい活気です。
注目の建築学科の学生作品は、2番目の登場!
・・・フレームの竹が勝ちすぎ、布の表情が消えて、服が体と離れすぎ・・・
しかし、建築選考で衣服の扱いに慣れない彼らが、アパレルのコンクールで、魅力あるコンセプトを武器に、応募総数1595組のベスト16組に残ったのは素晴らしい健闘です。


公開審査=ファッションショーが終わって、三人で感想を話しながら、私たちの審査結果予想は、ほぼ一致しました。
そして、審査発表!
我々の審査結果予想は、ことごとく外れてしまいました。装苑賞と佳作一位をとった作品には、あまり注目していませんでした。


装苑賞の作品は、和服の染めに使う伸子(しんし)をモチーフにした独特なディテールをもつ造形的な作品。佳作一位と協賛のルームズ賞をダブル獲得した作品は、家族の顔写真を大胆にテキスタイルにプリントして素直に表現した作品。
審査員の講評・・・
・・・今年の装苑賞はつまらなかった。唯一、顔のプリントの作品だけが楽しさ・可愛さを感じた。
・・・顔のプリント作品は、「ぷっ」と笑ってしまったけど、楽しかった。
・・・造形の競演には飽きた。もっと新しい楽しさが欲しい。
・・・装苑賞と佳作の作品は、モデルが可愛らしく魅力的に見えた。

私たちも、審査員も、同じ年代です。モダンデザインの洗礼を受け、ポストモダン、デ・コンストラクションのデザイン概念を共有してきた世代です。しかし、今日の装苑賞の審査員たちは、自分達のデザイン概念を超える何かを求めて作品を見ていたようです。
コンセプトや造形美や完成度も審査の評価には置いていましたが、それ以上に、無邪気に楽しい・可愛いと思える、バカバカしくも魅力ある、次のデザインの展開を探していたように思えます。

そんな講評を聞いて、今日の装苑賞・佳作の作品を見直すと、いずれも、コンセプトとはならない様なパーソナルな関心を展開した、無邪気な楽しさを持った作品でした。その一方で・・・モデルが可愛らしく見えた。・・・という審査員の講評も頷けました。
・・・難しい事は脇に置いておいて、無邪気な楽しさが、着る人を活き活きと明るく綺麗に魅せていました。

建築も、造形やコンセプトの強さに心奪われるあまり、主体であるべき生活者の存在を見失う事もあります。・・・モデルが可愛らしく見えた。・・・そんな家をつくりたいですね。