デ・コンストリュクシヨン

アパレルデザイン学校でデザイン史の講義、アール・ヌーボーからポストモダンまでを駆け足で解説しました。私が学生だったのは30年も前のポストモダンの真っ只中で、当時はバウハウス流のモダンデザインまでが歴史として扱われました。

現在では、80年代に大流行していた、フィリップ・ジョンソンやジェームス・スターリング、マイケル・グレイブスらの古典主義建築からの強引な引用としての「ポストモダン」は、バブルの崩壊とともに歴史上の出来事になりました。



モダンが解らなければポストモダンは解りませんし、構成主義が理解できなければ脱構築主義(デ・コンストラクション)は理解できません。それが歴史を学ぶことの意義ですが・・・これからアパレルの分野で活躍していく学生達に、カビの生えた古臭いデザイン史では無く、生きたデザイン史を学んで貰おうと思い、昨日の講義では「ポストモダン」特にデ・コンストラクション・・・アパレル学校ですからフランス語で、デ・コンストリュクシヨン・・・に時間を割いて解説しました。80年代から30年を経て、古典主義の引用としてのポストモダンは歴史になりましたが、ポストモダンのもう一方の流れ=デ・コンストリュクシヨン(脱構築)は、現代のデザインでも欠く事の出来ない概念です。


 
「ある対象を解体し、それらのうち有用な要素を用いて、新たな別の何かを建設的に再構築する」・・・建築では、ダニエル・リベスキンドやフランク・ゲーリーが、垂直な柱や壁に水平な床という建築形態を解体して、デ・コンストラクションをストレートに実践しています。





私も、屋根や建物の意味を問い直す建築をデザインしてみたり、住宅のプランニングなどで家族の関係性や間取り等について既成概念を疑って再構成してみたり、「今までの常識を解体し再構築する」というデ・コンストラクションのデザインプロセスを欠かす事はできません。








 
アパレルの分野では、三宅一生川久保玲山本耀司・・・三人の日本人が、それまでの西欧流の服づくりの手法やデザインを解体してパリコレクションに発表しました。ワンサイズの服、一枚の布のパターンなど、西欧の服作りの常識を覆した背景には、「キモノ」の文化・日本の文化があった事は言うまでもありません。
西欧の伝統を解体した彼らの服作りの概念は、アントワープ王立芸術学院で学んだドリス・バンノッテンら「ベルギーの6人」に続き、新たな服作りの流れが展開しました。




アパレルや建築のデザインの解説ばかりでは、「常識や既成概念を解体しながら再構築する」、という概念が判り難いかと思い、20世紀バレエ団、モーリス・ベジャール振付の「ボレロ」を例にあげました。クラッシックバレエ、モダンバレエが舞台芸術を極めつくした後に、シャーマンが神にささげた踊りの原点に立ち返って、それまでのバレエを解体し再構築した、コンテンポラリーバレエの最も有名なダンスの一つです。ジョルジュ・ドンのダンスがYouTubeで見つかりました。



こうして「デ・コンストリュクシヨン」を復習してみると、閉塞感、不況、先行き不透明・・・と言われていますが、「今の時代は、なんてワクワクする事が沢山あるのだろう」、と思います。
こんなに自由に、根源の意味を問い直し、物を表現できる時代に生きているのですから・・・。