----------  マドレーヌ・ヴィオネ

このところ、すっかり、ファッション・服飾デザインのブログになってしまっています(笑)
週末・東京に打ち合わせに行ったのですが、その機会に、東京都現代美術館で開催されている「ラグジュアリー ファッションの欲望」展を見てきました。美術館で開催されるファッションの展覧会は初めて見ましたが、これがとても面白かったです。

古くは18世紀の宮廷文化の時代から、シャネル、バレンシアガ、ディオール、サンローランの時代を経て、新しくは、川久保玲、マルジェラ、ニコラ・ゲスキエール等の作品を展示して、服飾における「ラグジュアリー(贅沢)」のあり方・変遷を探った展覧会です。
吹き抜けの広い空間に展示された川久保玲のコーナーは、妹島和世が会場を構成して、現代彫刻の展覧会の様な楽しさでした。



その中で、流れるようなエレガントなシルエットのドレスに目を奪われてしまいました。建築では、ミースやコルビジェが登場し、無駄をそぎ落とし洗練された機能美を追及していた「モダン」といわれる時代の作品です。

作者は、マドレーヌ・ヴィオネ。
ヴィオネは、シャネルと同時代に活躍したデザイナーです。シャネルはファッションの世界に限らず誰もが知っていますが、・・・不勉強ながら・・・ヴィオネの事は知りませんでした。バイアスカットによる立体裁断を考案した人で、イッセイミヤケヨウジヤマモト、を初めとして、後のデザイナー達に多大な影響を与えた偉大なクチュリエです。近年、ヴィオネが再評価され、現在、パリの装飾美術館で彼女の展覧会が開催されているようです。
1925〜30年頃のドレスですが、今の時代にあっても全く古さを感じさせない、知的で優雅なシルエットです。水が流れるようなドレープの美しさにも溜息がでます。
「モダンデザイン」の時代・・・ミュグレー、ディーオール、サンローラン等は、建築や彫刻にヒントを得て構築的な服をデザインしていました。同じ時代にあって、マドレーヌ・ヴィオネのデザインプロセスは全く違います。機能美を追及しつつも、とことんまでに布の表情と体の美しさを追求し、流れるような誠実な美しさでした。

無いものねだりかもしれません・・・建築では絶対に表現できない、しなやかな美しさに魅入ってしまいました。