----------  松本市景観計画(案)

昨年11月中旬に、景観法に関わる、松本市景観計画(案)が提示され、説明会が催され、計画案に対して多くのパブリックコメントが集まりました。この松本市景観計画(案)が、景観条例の骨子になるので、とても重要な問題です。私も、建築士会松筑支部の関係役員として、建築士会と建築士事務所協会の連名でパブリックコメントを提出しています。今日は、松本市民環境大学・・・というNPO組織が、これをテーマに取り上げ、景観シンポジウムを開催したので、参加してきました。


景観計画市民会議の座長の信州大学の教授、地元町内会の代表、松本市と同じように、国宝の城郭をもつ、姫路市彦根市犬山市の都市計画の担当者もパネリストに加わり、松本城、三の丸一帯の高さ規制の29.4mが如何なものか・・・・という内容について、色々な意見が出されました。

私も、今回提示されている、松本市景観計画案は関心を持ってみていますが、今回の景観計画(案)を分析すると、建築基準法都市計画決定用途地域による容積率を高さ規制に置き換えているに過ぎません。商業地域は、女鳥羽川以北(三の丸)も女鳥羽川以南の再開発地区も、高さ29.4mの高さ規制に設定されています。

今回の計画案では高さ制限の是非に話題が集まっていますが、商業地域・容積率も同じ中で、一方は29.4mでもう一方は15mと、高さ制限の違いをつくることは、行政担当者としては問題が多かったのでしょう。都市計画マスタープランと景観法の整合を図る上で、用途地域の見直しが不可欠です。景観法の高さ制限だけを取り上げて、是非を論じる問題ではありません。

都市計画マスタープランの背景となるのは、松本市松本城をこんな街にしたい・・・という政策的なビジョンですから、是非を論じるべきは、高さ制限ではなく、その背景となる都市計画のビジョンです。
松本城三の丸を、歴史を尊重して、観光振興を目指し、景観を重視した低層に抑え、城下町としてのブランド力・ポテンシャルを引き出すか?   あるいは  経済活動の可能性に期待し、高密度の容積や高さを許容するか?

私の考えは前者で、ありもしない経済の可能性を担保するよりは、いかに街のポテンシャルを上げるか考えるべきだと思いますが・・・・・今回の計画案に際しても、松本市の都市計画的の根本に関わる議論が棚上げされています。

同じ国宝の城をもつ都市、計画担当者や会場の拝聴者からも、同じような主旨の意見が出されました。彦根市姫路市犬山市では、都市計画と景観について根本的な政策的なビジョンがあるようです。
彦根市は、お城の廻りの景観を考える際に、お城の廻りの用途地域を、商業系から住居系に見直したそうです。
姫路市は、世界遺産としての経緯もあり、お城を中心とした半径800mの範囲を、15m以内の高さ規制をしています。
犬山市は、いろいろな規制以前に、「どんな街にしたいか」の議論を徹底的に行ったそうです。犬山市の担当者からは、松本市はどんな街にしたいかのビジョンが欠けていないか?との指摘もありました。
●拝聴者のある人が、松本市の三の丸の辺りが、商業地域に用途地域指定されていることに、大きな疑問を唱えていました。歴史的街並みを守る観点から、商業地域の指定には矛盾があるのではないか・・・と。


折りしも、市長選の前哨戦の最中ですが、現市長からは、はっきりした都市計画政策が見えてきません。市長が変われば、松本城三の丸一帯の、用途地域容積率・高さ制限が、再度見直されるというシナリオもあるかもしれませんが・・・。
この景観計画(案)が市議会に懸けられるのが3月議会、市長選も3月ですから、市長選の動向も気になるところです。



それにしても・・・・市民会議の座長・・・今日の講演会でも基調講演をしていましたが、当たり障りのないことばかり話して、熱意を感じません。計画案の説明や経過説明でも、段階的な整備だの、高さ29.4mでも規制しないよりはマシだなど、都市計画家の発言としては歯切れが悪く、市の担当者の立場に終始していました。立場上、理想を話す事は、難しいのでしょうか?