松本衣デザイン専門学校 立体造形演習講評会

2学期の立体造形演習の6作品をまとめて講評しました。
衣服は立体造形物です。しかし、衣服の製作には時間と手間がかかります。ベーシックデザインでは、簡単に製作でき、立体造形の着眼点が解りやすい課題に取り組みます。自分でデザインし、自分の手で立体作品をつくる体験の中から、立体造形物をデザインしたり・製作したり・解説する為に大切な「立体造形の着眼点」を身につけるのが授業の目的です。立体造形物をデザインし製作する事は、おそらく初めての経験なので、まずは、丁寧な仕事で、立体を完成させる事が重要で、その上で其々の演習の着眼点に即したデザインを考えてみます。
作っただけではなく、どの立体作品のどこが良いのかを的確に理解する事もこの課題では大切です。ある学生が「立体造形演習って、自分のセンスのなさを確かめる為にやっているみたい。」と言っていましたが、これはとても重要です。なぜなら、他の良い作品が良さが解かったからです。従って、まず自分の作品の製作意図や感想・反省点を解説する。次に、自分が良いと思った他の人の作品を解説する。というスタイルの講評会としました。皆きちんと立体造形の肝を理解して、的確な解説をしていました。


■演習1・・・3つの幾何学形態による立体
・正確な製図。きちんとした裁断や折り目付け。綺麗な張り合わせ。バランスの良い立体構成。
・シンプルな構成による、「間」の取り方の重要性。
 
最初の課題で、一見簡単そうですが・・・実は難しい課題です。しかも、其々の学生の立体造形センスが解ってしまう怖い課題です。左の作品は「間」の取り方が秀逸。右の作品は、絶妙なバランス。


■演習2・・・沢山の三角錐による立体
 ・沢山の数の三角錐をバランス良く構成する為に、事前の作戦=コンセプトが重要。
 ・リピテーション、グラデーションに抑揚を持たせる意識。(密→疎)
  
沢山の三角錐を組み合わせる立体なので、様々な個性が出ました。大きな広がりのある作品(本日の講評会での、学生人気NO1でした!)。スパイラルと穴がテーマの作品。アルマジロの様に凝縮した作品。


■演習3・・・帯状のケント紙による立体
 ・ケント紙のしなやかな質感、折り目を付ける事でシャープになる表情・・・
 ・色々な表情を組み合わせて、楽しい立体を構成する。
 
アパレル学校の学生が好きな、可愛らしくて?楽しい課題です。左の作品は360度、どこから見ても楽しい・・・立体ではとても大切なポイントです。


■演習4-1・・・片面段ボールとケント紙による立体
 ・片面段ボールの独特の質感とケント紙の質感を理解して立体を構成。
 ・片面段ボールの色とケント紙の白を活かした構成。
■演習4-2・・・片面段ボールとパターン紙による立体
 ・片面段ボールの独特の質感とパターン紙の質感を理解して立体を構成。
 ・片面段ボールの色とパターン紙の白を活かした構成。
 ※演習4-1と2をシリーズとして関連付けが出来れば、尚、面白い。
  
  
素材の特質を捉えてデザインする・・・アパレルデザインではとても重要な着眼点です。
左上の作品は、素材を活かした面白いパーツを幾つか作っていのですが、立体構成にまとめられなくて困っていたのを私が手伝って構成しました。日本人はシンプルなデザインは得意ですが、この様に色々な素材や形や色をゴチャゴチャに組み合わせる立体造形が苦手です。ラテン系の得意分野!・・・例えば、エットレ・ソットサス(メンフィスデザイン)
 


■演習5・・・ケント紙によるミカンのドレーピングの立体
 ・ミカンの色々なドレーピングを考える。
 ・ミカンとは素材感が違うケント紙に置き換えた時の、立体の再構成。
 ・3次元の曲面のミカンを2次元の面のケント紙で置き換える際の歪みや隙間の美しさ。

こちらは、先日のブログで紹介した通り・・・。http://d.hatena.ne.jp/ya-ao/20121119
今年始めて試してみた課題だったので、私自身どんな課題になるか自信がありませんでした。
「ミカンとは素材感が違うケント紙に置き換えた時の、立体の再構成。」・・・そんな事聞いて無い!(学生の弁)
だって始めての課題なので、どこに着目すべきか確信がありませんでした。。やってみないと解りません!
・・・講師も手探りで、面白い課題を作ろうと悩み続けています。