職人気質

35坪程の小住宅の現場での出来事・・・
屋根の破風(屋根の縁)の木部に浸透性の塗装をしました。
べニア板に塗られた塗料メーカーの見本でグレーを選んで塗って頂いたのですが、こげ茶色です。
「グレーでお願いした筈ですが・・・」と言うと、
現場監督は「打ち合わせ通りのグレーの塗料で塗りました。」との返答。
塗装職人は「木材の塗料の吸込みが良くて、塗料メーカーの見本とは違うこげ茶色になってしまいましたね。グレーの仕上がりをイメージしていたのでしょ。」

現場監督の「打ち合わせで決めた塗料で塗装したから問題ない。」と言う態度=過程・手続きの正しさの主張と、塗装職人の「こげ茶ではなく、グレーの仕上がりをイメージしていたのでしょ。」と言う態度=イメージの共有と、結果に対する不満足とは全く違います。べニア板に塗られた塗料メーカーの見本での色指定を、塗料の指定として捉えるか、仕上がりのイメージとして捉えるかの違いと言ってしまえばそれまでですが、グレーがこげ茶になった事に問題を感じない感性が理解出来ません。ここまでのやり取りで、既に誰と話すべきかは明白です。

塗装職人に・・・「もう少し白っぽい塗料を塗ればイメージに近い色になるでしょうか?」と相談しました。
「木材の地色があるから限界はありますが、明日、白い塗料を塗り重ねてみましょう。」
・・・翌日、昼休みに現場に寄ったら、イメージ通りの色に仕上がっていました。
職人はオーダーに対する理解と結果が全てで、この様な職人気質がある限り「ものつくり」に希望が持てます。


一方で、この頃、職人気質の現場監督が少なく、中間管理職的な現場監督が多いのは、仕事の結果よりも、打ち合わせや手続きを重んじる、マニュアル管理的な社会の風潮でしょうか?あるいは、景気が悪く仕事の余裕が無くなってしまったからでしょうか?
現場監督は工務店のサラリーマンで、一人親方の職人の様に純粋に「ものつくり」を考えていられない・・・と言う立場は理解出来なくもありませんが・・・現場監督=プロジェクトマネージャーに、施主や設計者とイメージを共有する姿勢と、結果に対する責任感が無ければ、一品生産の建築など成り立ちません。