松本市で地震・・・その2

まずは、松本駅前付近に向かいました。デザイン学校の照明の落下は、宙づりのライティングレールの振れ止めが不足していた様子です。学生の登校前で、けが人が居なくて何よりでした。
建物1は陶器店です。1階の被害は少なかった様ですが、2階では、多くの商品が床に落下して破損していました。3階のオフィステナントフロアーでは、廊下の石膏ボードの継ぎ目が割れていました。被害が大きかったのは4階です。倉庫は、棚から落下した商品や空箱で足の踏み場もないほどです。オーナー住宅では、本棚から本が飛び出し、キッチンは食器や食料品が散乱していました。
駅前のこの辺りでは、上階の方が大きく揺れた様子です。この建物は鉄骨造で層間変形角1/300で設計しましたから、単純な揺れでしたら、2階の床で15mm・3階の床で30mm・4階の床で45mmの揺れになる計算です。外壁カーテンウォールのガラスは無事で、ホットしました。
オーナーのお話では、「先日体感した、地震体験車の震度7程度の揺れに感じました。」との事。松本市役所の地震計で震度5強ですから、市役所よりも震央に近く、鉄骨造のビルの4階でのオーナーの体感は、大げさではないでしょう。倉庫に従業員の方が居たら大変でした。

近くのビルでは、外壁のガラスブロックが全損していました。

中町では屋根瓦が外れ、パルコ前の歩道では、インターロッキングが動いていました。


駅前から、建物2に向かいました。
震央に近づくにつれ、瓦がずれた建物が目立ち始め、ブロックや大谷石の塀が至る所で倒れています。


建物2では、揺れた瞬間に、あらゆる物が棚から飛び出してきたそうです。ダイニングに居た奥さんは、テーブルの下に潜り込むのがやっとで、物凄いスピードの揺れだった様です。震源が浅い直下型地震の典型的なパターンです。
駅前の建物1と違っていたのは、この建物では、1階・2階・3階全ての階で、同じ様に物が散乱した点です。オーナーの説明では、1階に駐車してあった自動車が、北に約20cm動いていました。

瞬間的に、地面が南に20cm程動いたのでしょう。廻りの建物の瓦や塀も、全て、同じ方向=北に向かって倒れていました。


駅前付近は、地震で建物が揺れて、建物が損傷した・・・という印象でした。駅前は沼地状の軟弱な地盤ですので、揺れが増幅していたのかもしれません。
一方、震源近くのこの付近では、地面が一瞬にして動いて、ダルマ落としの様に塀が倒れ、瓦が外れ、棚の物が飛び出した・・・という印象でした。
付近には、築30年以上の建物も多くありましたが、長く大きな揺れでなく、ごく短時間に地面が動く揺れだったのが幸いしたのでしょうか?・・・破損の状態は、瓦が外れたり、外壁に亀裂が入る程度で、大きな損傷が無かったのが特徴的でした。
もし、ピロティー状の建物が、今回の地域にあったら・・・一瞬でダルマ落としの様に損壊していただろうとイメージできます。


今回、被害があった地域を廻り、話を聞く中で、震源の深さ・震源からの距離・地盤の状態により、地震の揺れ方は異なり、建物の被害にも違いがあるのが解りました。松本市内の地形や地盤の状態・断層の位置は、概ね理解出来ているので、今回の揺れ方の特性を設計に活かす事ができるかもしれません。

尤も、これ以上の地震は来て欲しくありませんが、もし、牛伏寺断層が動いたら、今回の地震の比ではないでしょう。そうならない事を祈ります。