景観シンポジウム

先週、土曜日に、松本市景観シンポジウムを行いました。
様々な分野の方を招いて、講演をして頂くフォーラムも今年で25回を数え、四半世紀に渡り、フォーラムを継続して頂いた先輩達には頭が下がります。過去には、まちづくりの啓蒙活動として、知名度の高いタレントをお呼びしたり、実に、様々な分野の方に、色々な視点でのまちづくりのお話を伺ってきました。
今年、お呼びしたのは、窪田亜矢・東大都市工学科・准教授。私がスタッフとしてお世話になった曽根幸一さんに言わせると、都市デザインの若手の俊才の一人だそうです。事前の打ち合わせで上京した際、「どんな方がフォーラムを聞きに来るのですか?」との問いに、「25回を数えるので、専門家であったり、市民であっても都市デザインに対する意識の高い方達が多数です。」とお答えし、まちづくりの啓蒙活動とは違った、専門家と同じ視点での講義をお願いしました。

演題は「都市デザインによる時間の積層」・・・何やら難しそうな題ですが、難しい話を解かりやすく話して下さいました。簡単で解かりやすいレクチャーを目指せば、街のこんな風景や景観が素敵で、これを活かす街にしましょう・・・というシンポジウムに終わる例が多いのですが、今回は、街を構成するシステムやデザインの方法論を、論理立てて丁寧にお話して頂きました。

どんな分野のデザインでも同じですが、結果としてのデザインは大切ですが、そこに至る、そのデザインを構成する原理や方法論、コンセプトまでが、全体としてイメージできる事が大切です。そんな切り口で、都市デザインを解説して頂き、フォーラムに参加した方達も、とても新鮮に感じた様でした。

啓蒙活動・・・専門家が熱い情熱で市民を感化する・・・という時代は、そろそろ終りなのかも知れません。もはや、専門家が上からの視点で、市民をリードしていくという時代ではありません。市民も専門家も、同じ視点に立ち、同じ理念を共有しながら、一緒に物事を考えていく時代なのだと感じています。思いや情熱が無ければ、まちづくりは出来ませんが、それだけでは、まちづくりは出来ません。そこには当然、理念や知識や技が必要ですが、それは専門家だけの占有物ではありません。市民と専門家が、それらを共有する事が欠かせないと思っています。


講演の冒頭で、窪田さんが話した言葉が印象的でした。・・・・今日ここにいらしている市民の方々は、そこいらへんの専門家よりも、余程まちの事を考えている、専門家以上の存在だと思っています。