こんな時

町や村が丸ごと海にのみこまれていく様を目にした。そして、救助を待つ多くの人々が居る。今、こんな時、私のブログが、建築士・建築家・都市デザイナーとして、何を書いても空しい。多くの方の悲しみには、言葉もありません。

そんな中で、私は仕事をしていました。仕事に追われている・・・と言った方が良いかもしれない。仕事をしながらも、建築の設計をすることに空しさを感じていました。
そして、私の事務所でアルバイトをしてくれている学生にも、家が流されご家族の安否が解らずにいる中で、アルバイトをしてくれている学生がいました。避難所に駆け付けたいでしょうが、それは避難所に負担が増える事・・・どんなに辛いか・・・しかし、その辛さを顔に出さずに仕事をしてくれていました。
昨日の夕方近くになって「家族、皆、無事が確認できました。」と、安堵の笑顔。
色々な報道や映像に触れて言葉を失っていた中で、心の底から「良かったね。」の言葉を口にする事が出来ました。

学生のご家族の無事を聞き・・・生きている事に感謝し、辛い中アルバイトをしてくれている学生の為にも、私を頼りにしているお施主さんの為にも、目の前の、自分が出来る事を精一杯やるしか無い・・・と前を向き直しました。
こんな時・・・だからこそ、いつもと変わらず、目の前の、やるべき事を坦々とする。何事にも一喜一憂せずに、きちんとした感受性を失わない様に、きちんと生活する。それしかすべき事は無いのではと思います。
今、本当に必要なのは、防災マニュアルでも、地震の知識でもありません。
こんな時・・・必要なのは・・・人間としての確かな感受性。

建築士・建築家・都市デザイナーとして感じ、書かねばならない事は沢山あります。
それを書くのは・・・また、いつか時がきたらにします。


P.S.
家に帰って、私の家族に、学生の家族の無事を話したら、妻は勿論、小学生の子供達も、会った事も無い学生の家族の無事を、満面の笑顔で「良かったね。」と喜んでいました。沢山の悲惨な映像を目にしていた子供達が、生きている事の幸せ、誰かが生きている事の喜びを感じ、きちんとした感受性を持っていてくれたのが嬉しかった。