インタビュー

お昼御飯を食べながら、NHKのスタジオパークを見ていたら、今日のゲストは阿川佐和子さんでした。・・・チャーミングとはこの人の為にある言葉だと思います。
この番組の住吉美紀アナウンサーのインタビューも好きなのですが、話題は「週刊文春」の阿川佐和子さんのインタビューの話になりました。住吉さんが「インタビューの極意とは?」と尋ねると、「インタビューで用意する質問は一つ」と答えました。
新人のインタビュアーは、相手との会話が途切れるのを恐れるあまり、いくつもの質問を用意してインタビューに臨むのですが、それだと会話は一問一答になるだけで、相手は次々と浴びせられる脈略の無い質問に頭が混乱するだけです。質問は一つだけ用意し、相手の答える話を良く聞いてその中から更に次の質問を繋いでいくと、相手が自分で勝手にイメージを広げて多くを語ってくれるのだそうです。・・・流石!



設計でも全く同じです。独立したばかりの頃、お施主さんに、あれも聞かなければ、これも確かめなければと思うあまり、一生懸命にメモを取りながら、次から次へと自分が設計をする上で知りたい事を質問責めにした事があります。なんて馬鹿な事をしていたのでしょう。
自分の夢を託す家をつくるのは楽しい筈なのに、設計事務所ごときに次々に質問責めにされて、答えの一つ一つを記録に残されたとしたら・・・それでは、まるで証人尋問で少しも楽しくありません。頭の中は、質問に答えるだけに精いっぱいで、自分が夢にみる家について語れずに、さぞかし不愉快だろうと思います。キッチンのコンロが電磁調理器だろうがガスレンジだろうが・・・そんな事は、お施主さんが自分の夢みる住まいを語っているうちに話してくれますし、お施主さんの考えや嗜好をお聞きしているうちに自然に判断できる事です。箇条書きにして質問しなければ確かめられないとしたら・・・お施主さんの事をきちんと判ろうとしたの?

あるお施主さんに「議事録をみると、これで良い筈ですけど・・・」と言った事があります。その時、「確かにあなたはそういったかもしれないし、私もそれで良いといったかもしれない。しかし、私の記憶には無い。私の記憶に残る様にきちんと会話出来ていなかったと言う事だし、私とイメージを分かちあえていなかったという事でしょ。」・・・と言われたときには、返す言葉がありませんでした。



我々の仕事は、お施主さんと会話をして、相手が夢みているイメージを「建築」という形にする事です。一問一答の箇条書きで、お施主さんのオーダーや好みを問い正して図面に描き止める事ではありません。インタビューも設計のヒアリングも、一見スマートに見える一問一答ではなく、相手と自分が向きあいながら互いのイメージを広げる事。
阿川さん・・・本当にチャーミングな人です。この人に自分の話を笑顔で見つめながら聞いて貰ったら、何でも話してしまいそうです。私の設計事務所で、お施主さんに設計のヒアリングをして頂きたいです。・・・・・・女性ってズルイ!