--------建築の時代性


先日、下伊那地方に住宅の打ち合わせに行った際に、飯田市美術博物館を見てきました。松本市からは、そう遠くない場所にあるのですが、今回、初めて訪れました。

原広司氏の設計による、1989年竣工の建築です。20年を経た今みても、ロビーの列柱と細かなスケールのトップライトは心地よくも不思議なスケール感で、新鮮な感動を覚えました。
 



それにしても、今回、飯田市美術博物館を見学して、「原広司」よりも「80年代という建築の時代性」を強く感じました。私が20年前、曽根幸一さんの事務所に在籍した当時は、時代性よりも個々の建築や建築家の個性の違いを感じていました。しかし、時を経て、客観的にそれらの建築に触れてみると、そこに感じるのは、それぞれの建築・建築家の個性よりも、「建築の時代性」でした。
歴史的建築の引用・大胆なスケールとヒューマンスケールの対比。コンクリート打ち放し・ラスタータイル・シーム溶接のステンレス屋根・フラットなアルミパネルをまとった建築。
飯田市美術博物館・1989・原広司
多摩複合文化施設・1987・曽根幸一
違う建築家の手による建築ですが、ポストモダンの建築の構成や、素材・ディテールには、80年代後半の同時代性を強く感じました。歴史的建築物に時代を感じるのは当然としても、わずか20年前の建築から、これほど強く「時代性」を感じるとは思いもしませんでした。80年代の建築に、当事者としてリアルタイムに接していただけに、自分が係わってきた仕事に「時代性」感じてしまうことは、少なからずショックでした。

今、造られるている数々の個性的な建築・・・・何年・何十年か後に客観的にそれらの建築に触れる時、そこに感じるのは個々の建築よりも、やはり「建築の時代性」なのでしょう。
翻して、私が、アルバ・アアルトやローレンス・ハルプリンに魅かれるのは、彼らからは時代性を感じないからだと思います。