-----------  問題を見い出す


連日暑さが続く中、今年は、夏休み返上で仕事をしていました。スタッフや現場が夏休みの間、電話や打ち合わせもなく、とても仕事がはかどりました。
昨日から、夏休み明けのスタッフに基本設計中の仕事のスタディーをお願いしました。今日一日現場廻りをして、事務所に戻って彼らのスタディーに目を通したのですが・・・・とても不満。ただ図面をいじくり廻しているだけにしか思えない!狙いが定まっていない!の一言。自分のスタディーに対して、何を考えるべきか?の設問が出来ていません。

建築を設計するには、建築計画・構造・設備・法規・工法・流通経済・美学etc、知識として覚えたり、技として身に付けなければならないことがたくさんあります。しかし、それを身に付けたからといって、建築設計は出来ません。

建築を設計する上で欠かせないのは、施主の希望や廻りの状況・条件から、その建築のテーマを考える・・・・即ち、どんな建築にすべきか?を設問する事です。幾ら技を身に付けていても、その設問が出来なければ、建築をつくることは出来ません。そして、いろいろなスタディーの場面で、その設問をより深く掘り下げ、より具体的にあぶりだしながら、同時にそれに対して解決方法を見出していきます。
建築に限らず、創造的に何かをしようと思ったら、自分でテーマを見つけ、それを解決しては、また新たなテーマを見つけ、常に「設問・回答(仮説・実験)・検証・判断」のサイクルを繰り返すしかないでしょう。中でも「設問」は、全ての始まりで、その方向性が間違っていたら、どんなにスタディーを重ねても無駄です。大切なのは、答えを出すことではなく、問題を見い出すことです。

彼ら(お恥ずかしながら、私の事務所のスタッフですが)に欠けているのは、状況にあった設問を考え付く「勘」=「コミュニケーション能力と頭の回転の良さ」と、設問の正しさを自問する「根気強さ」=「建築に対する熱意と建物を使う人に対する愛情」だと感じています。相手の考えていることを理解し、状況を判断し、自問を繰り返す中からしか、狙いは定まりません。


尤も、我々のようなアトリエ事務所では、自分できちんと「設問」できる様になったら、独立してしまうのかもしれませんが・・・・それでは不満。頑張れスタッフ!頑張れ所長!