------------------  カーフリーデー


松本市は、今年の国際的なカーフリーデーに国内で始めて正式参加するそうで、「脱クルマ、歩行者優先の街」を目指すのだそうです。環境問題に関心の高い市民の中には、「さすが、環境の町・松本」と手を叩いて喜んでいる方も少なくないかも知れませんが、私はそれとは異なり「環境問題」が方便として利用されてしまう事に危惧を感じています。カーフリーデー参加表明=環境への関心とはみせかけで、恐らくは霞ヶ関官僚の助言で松本市の道路・建設行政部署が思いついた、道路整備補助金獲得のためのパフォーマンスでしょう。「環境問題」という否定しがたい正義をかざして、本来の「環境問題」とは違う目的を果たそうとする事は、アンフェアに思えます。(同じ理由で、「ロハス」というムーブメントにも違和感を覚えていますが・・・。)

カーフリーデー当日のマイカー禁止区域には、本町・大名町の東側の地区、縄手・中町・上土・緑町・高砂町などの城下町の風情を残す、普段からクルマのあまり通らない区域が指定されるそうです。パルコや駅周辺のクルマが多く中心市街地でも渋滞が問題となる地域は、マイカー禁止区域に指定されません。もともと、あまりクルマの通らない区域をマイカー禁止区域に指定して、交通が混雑する区域を指定からはずすのは本末転倒に思えますが、何故でしょうか?パルコ・駅前周辺は、国土交通省からの補助金で、クルマ社会を念頭にした土地区画整理・道路整備を終えているからです。


信濃毎日新聞1/7日朝刊より(一部加筆)
以前、運輸省建設省は、中心市街地の空洞化に対して、市街地の車両交通をスムーズにし、市街地に公共駐車場を十分に確保する方針で街を整備して、駅前・パルコ周辺は、この方針のもとに区画整理・駐車場建設・道路整備がなされました。かつては市街地に積極的に車両交通を誘導する施策でしたが、この頃のCO2削減問題などで国土交通省も方針転換をして、現在では、市街地に車両を入れないパークアンドライドを推奨したり、歩行者や自転車が快適に通行できる「くらしのみちゾーン」という補助金制度も実施しています。松本市もこの指定を受け、今回のカーフリーデーのマイカー禁止区域の高砂町や源池の井戸周辺は「くらしのみちゾーン」の区域指定を受けています。また、中町や上土・緑町周辺は、伝統的なまちなみ整備の補助金を受け、観光客が楽しく散策できる道路整備をめざしています。

ここまでで推察できると思いますが、今回、松本市役所が中心となり商工会議所などを巻き込んで、カーフリーデーに参加するのは、歩行者や環境に関心の高い町であることをアピールし、道路整備の補助金を獲得することが、大きな目的でしょう。国土交通省の施策に従い、歩行者に優しい街にして歩行者の為の道路を考えるので、補助金を下さいというのが本音です。「まちづくりのビジョン」がきちんとあるのならば、国から補助金を貰って、道路や住環境整備をするのは悪いことではありません。しかし、松本市の都市デザインの問題点はここにあり、国の施策が変わるたびにそれに追従するように考えを変え、国の土木行政の補助金を貰うために右往左往するだけで、一環した「まちづくりのビジョン」が見えてきません。市街地の真ん中・パルコの前に大きな駐車場ビルを建設し、伊勢町をクルマ交通の為に25m道路にするかと思えば、今度は「脱クルマ」ですから・・・。
仮に、本当に交通・環境問題を考えているのならば、渋滞が問題となるパルコ・駅周辺をマイカー禁止区域に指定して、交通・環境問題に正面から取り組むべきなのは、小学生でもわかる事です。しかし、渋滞などとはおよそ関係の無い区域を「カーフリーデーの実施区域案」として提示しているのですから、交通・環境問題としては全くの的はずれで、私の危惧は「当たらずとも遠からず」でしょう。(ちなみに、カーフリーデーを主導しているのは環境省ではなく、公共事業の大好きな国土交通省です。
とにかく、「環境問題」という大義名分の上に、あらゆる批判をかわそうなどという、ミエミエのやり方はいい加減に止めて欲しいと思います。交通問題・環境問題・都市デザインは、それぞれに関連があり、都市には環境も大切ですが、一方で都市に人を呼び込む経済も大切です。そこにさしたるビジョンもないまま「環境問題」にすりかえて、霞ヶ関の土木行政に追従するだけの都市政策には納得できません。