------------------  結露対策


・室内の風通しをよくすると結露しない。
・結露するので、加湿器は使わないほうが良い。
・冬は、サッシュの結露が心配だが、空気が乾燥しているので、壁の結露は心配がない。
・室内の壁に珪藻土などの調湿性のある素材を使うと結露しない。

これらは「結露対策」として正しいように感じますが、実は、いずれも誤りを含んでいます。熱心に勉強されているお施主さんでも「結露」に関しては、誤った認識の方が多くいらっしゃいます。「結露対策」として、多くのお施主さんが「風通し」を一番に掲げますが、これは必ずしも正しいとは言えません。

水は、空気中にも「水蒸気」という気体の状態で存在します。水が空気中に水蒸気の状態で存在できる量は、気温が高い程多く、気温20℃では、1立方メートル中、約17gの水蒸気が存在できますが、気温10℃では、約9gの水蒸気しか存在できません。それぞれの気温で存在できる水蒸気の質量を飽和水蒸気量といいます。それぞれの気温での飽和水蒸気量に対して、その時点で存在する水蒸気量の割合が湿度です。飽和水蒸気量に達した水蒸気が、液体になって、温度の低い面に水滴として現れる現象です。氷の入ったコップに水滴が付くのは、コップ表面で飽和水蒸気に達し水になった「結露」の状態です。温度による飽和水蒸気量の差が、結露のメカニズムです。


冬、外気温を10℃・湿度を50%とすると、空気中の水蒸気量は。約4.5gです。この空気を20℃に暖めると、4.5g/17g=26%で、物凄い乾燥ですから、健康の為に、加湿器を使うのは当然です。
そこで、室内を暖房・加湿すると、20℃の気温で50%の湿度では、約8.5gの水蒸気が存在します。約8.5gの水蒸気は、気温約9℃で飽和水蒸気量に達します。9℃以下に冷えたガラス窓が結露するのはこの為ですが、窓と同じように壁も低い温度になると結露します。
リビングを20℃・50%に暖房・加湿して、納戸を9℃以下の寒いままにしたとすると、リビングから流れ込んだ水蒸気は、納戸で飽和水蒸気量に達して結露します。風通しを良くするほど、大量の水蒸気がリビングから納戸に流れ込んで逆効果になります。箪笥の後ろの風通しを良くしても、箪笥の裏の壁が低い温度でしたら、結露してカビだらけになることは間違いありません。納戸の壁が結露しないようにするには、納戸に暖房器具を置いて納戸の壁を暖め、飽和水蒸気量にならない程度の10℃以上にする以外に方法はありません。
珪藻土のように調湿性のある素材は、結露しても水がしみ込んで水滴が目に見えないので誤解しますが、結露していることには変わりありません。氷の入ったコップに紙ナプキンを巻くと、水滴は見えませんが、紙ナプキンはびしょ濡れなのと同じ状態です。断熱が不十分で表面温度が低い珪藻土の壁は結露し、多くの湿気を含んだ珪藻土の壁はカビの温床です。




冬の結露対策では、適切な断熱・暖房で、室内の温度ムラ・温度の低い壁をなくし、温度により飽和水蒸気量をコントロールすことが有効です。
梅雨時はもともと気温が高いので、水蒸気量を減らして湿度を下げるしか対策がありません。除湿機を使うのも一つですが、一番有効なのは、梅雨時は窓を閉めて、湿度100%の外気と余分な湿気を室内に呼び込まないことです。風通しを良くすることは、逆効果になります。(湿気を嫌う海苔などは、密閉容器=風通しを悪くして保存しますが、建物もこれと同じイメージです。)
風通しが結露対策として有効なのは、5月や秋晴れの湿度の低い爽やかな風ですが、この様な良い季節には、そもそも結露の心配がありませんから、風通し=結露対策とはなりません。

結露対策は、風通しよりも、温度と水蒸気量により飽和水蒸気量をコントロールすることです。