------------------  ハイブリット暖房


ハイブリットとは、複数の違った方法を組み合わせて、お互いの欠点を補いあい、より優れた方法にする、という意味で使われます。ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた自動車「プリウス」が良い例です。現在、私の事務所では「ハイブリット暖房」を研究中です。工夫しています。ここで、組み合わせるのは「高温暖房」と「低温暖房」です。

高温暖房とは、ストーブ・ファンヒーターなどの燃焼系暖房で、室内で灯油・ガス・薪を燃焼させ、200℃前後の熱で暖房する方法です。建物の断熱が多少悪くても、高い熱で空気を温めるので暖房効果が得られます。建物に断熱をしていなかった従来の日本では、この暖房以外に選択肢がなく、殆どの家でこの暖房が使われてきました。高温暖房の最大の長所は、200℃前後の熱で直接室内空気を温めるため、外気温や建物の条件によらず、すぐに室温があがる点です。最大の欠点は、暖房器具の近くと、暖房器具から離れた場所とでは温度差が大きく、これが室内壁面に結露を発生させる大きな原因のひとつでした。

一方の低温暖房は、床暖房・パネルヒーターなどで、30℃〜80℃の熱により、室内各所に放熱器(放熱面)を分散配置し、部屋全体を暖房する方法です。室内の空気を短時間で温めることは出来ませんが、低温の熱を常に室内に供給して、建物の温度を一日中一定に保ち、快適な室内環境をつくります。室内に分散配置した低温発熱体で暖房するために、家全体を同じ温度で暖房することができ、室内の結露の心配がありません。この暖房方法では、建物の断熱が絶対条件ですが、現在建設する建物は十分な断熱性能があるので大丈夫です。発熱体を室内にまんべんなく設置する必要がある為、設備投資が高くなりますが、快適性と設備投資とのバランスで、この暖房方法を選択する方が増えています。

今まで、私が設計した住宅でも、建物の仕上げのグレードを低くしても何とか予算を捻出し、室内の温度ムラがなく一日中20℃前後の室温の快適なパネルヒーターや床暖房の設置を希望する方が多く、我々も、低温暖房の快適性をお話してきました。

しかし、現在設計中の複数のお施主さんから、「共働きで昼間は家にいないし、夜は暖かい布団の中に居るので、朝晩だけ暖かければよいのですが…」という要望をいただきました。しかし、30℃〜80℃の低い温度で暖房するパネルヒーターや床暖房は立ち上がりが悪いので、朝出勤前の2時間や帰宅してから就寝までの何時間を高い室温で、他の時間帯は低い室温に制御することは不可能です。
一日中20℃前後の室温の快適な暖房が、人によっては無駄であり欠点になる事に今まで気づきませんでした。

その要望に応えるため、「高温暖房」と「低温暖房」を組みあわせた「ハイブリット暖房」を研究工夫しています。まず、パネルヒーターや床暖房を主に建物の北側に設置し、これによる建物全体の暖房効果の設定値を10℃+αとします。リビング・ダイニング・子供部屋などの活動領域は、即効性のあるFFファンヒーターや薪ストーブで計画し、必要な時間に必要な部屋を暖房します。これにより、朝の2時間はダイニング廻りだけを暖房し、夕方はリビングや子供部屋を必要な温度に暖めることが可能です。就寝中や不在時は、パネルヒーターによって10℃+αの室温を保つので、室内の結露の心配はありません。プリウス」に例えると、電気モーターがパネルヒーター(低温暖房)で、ダッシュ力のあるガソリンエンジンをFFファンヒーター(高温暖房)と考えると理解しやすいでしょうか。

イデアとしては、十分成立しそうですが…・。実際の運用で問題点がないか?実際にインシャルコストやランニングコストの節約になるか等、色々な面から検討中です。(参考になる経験や意見をお持ちの方がいらしたら、是非、お聞かせください。)