------------------  電気vsガスvs灯油


住宅の基本設計が終わり、細かな実施設計をはじめる前に、設備エネルギーの選択をしなければなりません。現在のところ、お施主さんからの希望では、オール電化やIHヒーター・エコキュートの攻勢で、電気が優勢のようです。今までは、寒冷地・信州の暖房熱源は、ランニングコストで圧倒的に灯油が優位でしたが、このところの灯油価格の高騰で、電気も選択肢に入ってきました。
電力会社の攻勢に対して、ガス会社では、家庭用ガスヒートポンプや、家庭用ガス発電システムでコージェネレーションによるエネルギー効率で対抗しようとしていますが、今ひとつ認知されていません。
電気が支持されている点として、IHヒーターは裸火が無いので安全。オール電化によって、家庭のインフラを一本化でき煩わしさがなく、かつ、安価な深夜電力の有効利用などがあげられます。しかし、IHヒーターは裸火が無いので、鍋が熱いのかわからずに触れて火傷、なんて笑い話もあるようです。また、お腹をIHヒーターに押し付けるような姿勢で調理する、妊婦さんと胎児に対する電磁波の影響も懸念されます。災害時に電気の供給が絶たれても、プロパンガスがあれば、コンロで炊き出しをしたり、暖を取ることも可能です。
空気でお湯を沸かすエコキュートは、とてもクリーンなイメージで宣伝されていますが、エコキュートを稼動させる電気は、言うまでも無くなんらかのエネルギーで発電しています。少し古い統計ですが、日本で、1993年(平成5年)度には、水力発電が12.3%、火力発電が56.5%(石油が19.1%、石炭が12.0%、LNGが22.2%、その他が3.2%)、原子力が31.2%だそうです。化石燃料に半分依存し、残りの半分以上は原子力で発電しているのですから、電気=クリーンエネルギーとは言い難いでしょう。しかも、電気は、発電の際の廃熱や送電ロスを考えると、発電に費やすエネルギーの1/3程度しか、有効利用されていないそうですから、ガス会社が宣伝するように、消費エネルギーの75%を電気や熱として有効利用できる、ガス自家発電コージェネレーションシステムの方がエコロジーなのかもしれません。

色々な視点からの分析があり、何が正しいのか一概には判断出来ないないので、「電気vsガスvs灯油(vs薪)」のエネルギー選択は、我々の判断では無く、お施主さんの主観を優先しています。昨今では、経済性や利便性・快適性に加え、環境負荷も考えなければならない要素です。電気会社やガス会社はそれぞれの良い面しか公表しませんから、我々は、それぞれの長所・短所を冷静に分析し、経済性・利便性・環境面・など色々な側面からアドバイスします。それを、最終的にどうするかはお施主さんの主観的な判断です。(これぞ、メデイアリテラシーです。
環境を最重要視するのならば、「我が家の暖房は、手編みのセーター(ドテラ)!冷房はシエスタ(昼寝)!」なんて、最高のエコロジーです。(ほんの20年前は、長野県ではどの家も、コタツに綿入半纏(ドテラ)でした。)



ところで・・・・。
環境面から電気を考えると、送電ロスはバカにならず、自家発電はむりだとしても、電気を使う場所のなるべく近くで発電する「地産地消?」が効率的です。東京から遥か離れた福島や新潟の原発から電気を送るよりも、大電力消費地の東京に原発を造った方が、地球に優しいに違いありません。国会議事堂が近くにあろうが、首相官邸や皇居があろうが、原発って絶対安全なんですよね・・・。ロハスな都会の人が、「お台場に原発を造ろう!」と唱えるなら、それは自分勝手(ロハスってエゴロジーだそうですから・・・)でない本物のエコロジーになるでしょう。地方交付税論議で、田舎を東京のお荷物扱いするならば、発電や産業廃棄物処理を地方に依存せずに、東京が自立する道も考えなければならないでしょう。