------------------  メディアリテラシー


先日、事務所に、ある本の企画書が郵送されて来ました。「○×日本の家具▽○l1」=日本を代表する家具デザイナー名鑑の企画書です。今日、その出版社から電話がありました。
「昨年、「○×日本の建築▽○l2」という企画をご案内した○○社です。その節は、ご協力頂けませんでしたが、ホームページを拝見して、家具もデザインされているようなので、今回の企画「○×日本の家具▽○l1」に掲載して頂けないかと思いご案内しました・・・掲載料は10万円です。有意義な広告宣伝費だと思いますが・・・・。」
「私が、一つや二つ家具をデザインしたからといって、日本を代表する家具デザイナーとは言えないでしょう。どんな基準で声をかけているのですか?私に声を掛けるなど、10万円の掲載料を支払えば、誰でも良いと言うことでしょう。前回もお断りしましたが、名声をちらつかせながら掲載料をとるこの様な企画は、私は嫌いです。」といってお断りしました。来年、本が出版されるときには掲載料(広告宣伝費?)を支払った「家具デザイナー」が本のページを飾るのだと思うと、私には関係ないのですが、少し悲しくなりました。

この企画は、現在、書店に並んでいる「○×日本の建築▽○l2」の姉妹版です。私には、この本に掲げられている建築家160余名が、日本を代表する建築家だとは思えません。有名・無名を問わず、出版社が自らの確固たる視点で建築家を選んでいるのならば構わないのですが、私に対して「掲載料10万円を支払えば掲載します」とのお誘いがありましたから、ジャーナルに確固たる審美眼はなく、明らかに掲載料を条件にした商業的判断です。その際、出版社の方にお聞きしましたが、安○忠○さんのような日本を代表する建築家の方からは(当然?)掲載料を頂かずに掲載しているそうです。それにも関わらず、この名鑑では、日本を代表する建築家達と掲載料を支払った建築家達が、何の区別もなく五十音順で同列に掲載されています。しかし、前者と後者には、明らかに違う選考基準があるのですから、少なくとも特別枠(掲載料なし)と一般枠(掲載料徴収)を区別する程度は、読者にたいする出版編集者の礼儀だと思うのですが・・・?

本来は、何らかのリベラルな選考基準があるべき「美術名鑑」の類にも、現に商業主義は存在しています。これに限らず、すべてのメディア情報には、何らかの商業的・政治的意図や利害があるのでしょう。今回、たまたま出版企画の内幕を垣間見たことで、情報を体裁や権威で判断するのではない、受け手のメディアリテラシーの大切さを感じました。
メディアリテラシー、なんともわかりにくい言葉ですが、主体的情報判断と解釈しています。)