------------------  デザイナーズ リフォーム


昨日、某大手ハウスメーカーの営業所からお電話を頂きました。
「この度、本社の企画で「デザイナーズ リフォーム」という新規事業を展開することになりました。ついては、デザイナーズが言葉倒れにならない様に、先生に設計やデザインの協力をお願いしたいのですが如何ですか?」
「私は、お施主さんから直接お仕事を頂き、お施主さんのパートナーとして、色々なお話をしながら設計を進めています。私は、お施主さんと向き合いながら仕事をしたいので、せっかくのお誘いですが、あきらめて下さい。」
>デザイナーズが言葉倒れにならない様に・・・とは随分おかしな話ですね。言葉倒れになりそうなら、始めからそんなことを言わなければいいと思うのですが?・・・それにしても、私はどう見てもイケメンではないので、「デザイナーズ」のオシャレなイメージを期待したクライアントの奥様を、ガッカリさせること請け合いで、あきらかに勧誘先を間違えています。(それはさておき・・・)



リフォームは、お施主さんとお話をしながら、問題点をあぶり出し、それをどの様に解決していくかを考えます。お施主さんの希望・リフォームする家の状態・それぞれに色々な事情があるので、決まった答えはありません。現場施工でも、既存部分との取り合いなどは、その場の状況に即して判断しなければなりません。リフォーム・増改築は高度な「一対一対応の設計作業」です。我々は、新築住宅の場合でも、施主の個性・要望や敷地の状況に即して、常に「一対一対応」の住宅設計をしています。
一方で、ハウスメーカーは「こんなタイプのプランの家は如何でしょう?」とお施主さんにお勧めして、本社で設計したプロトタイプ住宅を販売をして、価格に還元してきました。
同じ建設業でも、「一対一対応の設計作業」と「合理化されたプロトタイプの販売」とは対極に位置しますから、「一対一対応の設計作業」を不合理としてきたハウスメーカーの営業所に、リフォーム設計をこなす人材がないのは当然です。各営業所に優秀なデザイナーを配属できないのに、言葉ばかりの「デザイナーズ リフォーム」は、依頼主を欺くことになります。本社の勝手な企画に、営業所の相当者も困惑している御様子でした。しかし、だからといって、私をデザイナーに勧誘するのはお門違いです。大手資本のネームバリューの中で、「デザイナーズ」の看板デザイナーとして仕事をすることはビジネスチャンスです、と言いたいのでしょう。しかし、それは、私の小さな設計事務所を信頼して、仕事を依頼してくださったお施主さんを裏切ることに思えます。難しい設計に確かな技術で応えてくれた地元工務店の活躍の場を奪うことにもなります。そこまでして、ハウスメーカーに祭り上げてもらおうなど、全く考えに及びません。

不況が続く中、新築住宅件数が減ってリフォーム需要が増えています。そんな中で、今まで小さな増改築にも親身に取り組んできた、地元工務店や職人さん達にこそ、良い仕事をして欲しいと思います。ある地元工務店の専務が「今まで、我々は増改築をこまめにやってきたのに、この頃、知名度を売りに大手ハウスメーカーさんがリフォームをするので・・・・。」と嘆いていました。リフォーム・増改築は、柔軟な設計のできる建築設計事務所や、経験豊富な現場監督、色々な納まりを知っている大工さんに相応しい仕事です。


ハウスメーカー」を「ファミリーレストラン」に例えて、「建築家+地元工務店」を「おいしい街のレストラン」に例えればわかりやすいかも知れません。今まで、フードセンターで作った真空パックを解凍して提供していた「ファミリーレストラン」が、手のひらを返したように、「これからは、シェフがお客様のご希望をお聞きしながら、目の前でご要望に応じた料理をお出しします。」といっても誰も信じないでしょう。
ファミレスには省力化・合理化したコストパフォーマンスの良さが、街のレストランにはきめ細かな応対による手づくりの味があります。それぞれの特徴を活かせないのでは無理があります。建築も全く変わらないと思うのですが・・・。