------------------  隠岐島の産婦人科で考えたこと


隠岐島産婦人科医がいなくなり島でお産が出来なくなる問題の続報で、自治体広域連合が、隠岐島で10月までに出産予定だった60人に、交通費などの名目で最高17万円を助成するそうです。

17万円×60人/半年=2,040万円の助成金産婦人科医確保の一部にして、何とかならないでしょうか。今回の問題が、産婦人科の医師の不足が原因で、医師の確保の資金の問題でないことはわかりますが、それを助成金という形で解決しようとする行政に違和感を感じます

これからも、全国でこの様なことは増えるでしょう。
「この村には郵便局がなくなるので、近くの郵便局までの交通費助成金
「この村に、消防署がなくなるので、火災保険の上乗せ助成金
「この村に、駐在所がなくなるので、警備補償会社との契約助成金
人件費・設備投資・リスクを総合的に考えれば、対費用効果が薄い部分を切り捨てて、助成金の交付で解決するほうが効率的なのは明白です。これはサービスを施す側の行政・自治体の論理で、サービスを受ける側の住民の利益ではありません。
しかし、国は国家財政の厳しさを理由に「郵政民営化」に始まる改革で、地方の住民の不利益よりも、国の行政の効率化を選択しましたから、今後も行政・自治体のスリム化を旗印に、この手の話は多く聞かれるようになるでしょう。
冷静に考えると、今後日本全体の人口は減少する一方ですから、現在人が住んでいる全ての地域に変わらぬ行政サービスを維持することは不可能です。郷愁や感情論はありますし、過疎化する村の活性化も必要ですが、現存する全ての村を維持するのは不可能で、ある地域を閉村に向かって軟着陸させる政治も必要になっています。東大で土木を教えている建築家の内藤廣氏も、先日の講演で「村の安楽死」と言う表現でこの主旨を語っていました。
何事も、立ち上げよりも幕引きの方が大変ですから、安らかに閉村するのは至難のわざです。「助成金を交付しますから、これで我慢しなさい。」というのが幕引きではないはずで、住民に受け入れられながら安らかに幕引きすることが大切でしょう。これは、これからの政治の大切なテーマで、「自民党をぶっ壊す!改革だ!」も結構ですが、コイズミさんには幕引きのデリカシーを感じません。

ところで、隠岐島に話を戻すと、半年で60人もの出産が予定されているのですから、幕引きをすべき地域ではないでしょう。助成金を渡して「後は何とかしなさい。」というのは無責任だし、あまりに冷たい気がします。これからも人が住み続け、子供が育つ環境をつくるべくがんばってください。