------------------  住宅の風呂


今日は、現場で打ち合わせの後、お施主さんとご一緒に設備の器具リストを持って、TOTOのショールームに設備器具を見に行きました。
応対して下さったショールーム担当の女性は、器具リストを見ながら製品の特徴を的確に説明し、色見本や実物を指し示しながらカラーコーディネートのお手伝いをして下さいました。
さて、浴室のシャワー水栓は?浴槽の水栓は?「ここには、実物がございませんので。」という事で、カタログの写真とユニットバスの類似品で説明してくださいました。
次に、洗面台が並んでいるコーナーを見ていたら、後ろの壁に、シャワー水栓と浴槽の水栓が展示してあるではないですか!


今日の担当者は、新人ではなく、商品知識も豊富で的確なアドバイスの出来る方でした。今まで、何十件・何百件の風呂に関わりながら、シャワー水栓と浴槽の水栓を展示してある場所を知らなかったというのは、ユニットバスしか扱った事が無いということでしょう。
ハウスメーカーの住宅は勿論、建築家の設計した住宅のオープンハウスにお伺いしても、殆どの住宅がユニットバスです。ショールームの担当者が水栓金具の説明が出来ないのも無理は無いのかもしれません。
ユニットバスは施工も簡単で部屋ごとユニットですから、排水を一箇所繋ぐだけで施工が完了します。工事のリスクを嫌うハウスメーカーではほぼ100%がユニットバスの浴室なのは当然のことでしょう。私も、木造住宅の2階に浴室を計画する場合には、防水の信頼性を重視して、ユニットバスを選択しています。現在は、色々なメーカーで色々なデザインのユニットバスが造られ、値段も下は60万円〜上は300万円を超えるものまであり、選択肢も豊富ですから、住まう方がそれで満足するならば良いでしょう。


しかし・・・。
建物を構成する部品を上手に組み合わせるのも、我々の大切な仕事ですが、私には、ユニットバスが部品だとは思えません。風呂もリビングやダイニングと同じく、一日の疲れを癒す大切な部屋ですから、他の部屋をデザインするのと同じく、本来は個々の家ごとにデザインするべきでしょう。
現場で防水工事をし、浴槽を据え、排水を整え、水栓金具を取り付け、タイルを貼って浴室を仕上げるには、色々な知識や熟練が必要です。施主の希望に応える為に、水を漏らさず快適で清潔な水廻りのディテールに知恵をこらし、水廻りのディテールをこなせるのが、一人前の設計者や現場監督の証しでした。
一方で、「数あるユニットバスの中からどれにしましょうか?」という態度は、「数ある基本住戸パターンの中からどの家にしましょうか?」というハウスメーカーの態度と変わりありません。我々の同業者が、リスク回避に主眼を置いてユニットバスを積極的に使うのだとしたら、個々の施主の為に個々の設計をする自らの仕事を否定していることに他なりません。


建築家や工務店が水廻りをデザインする知識や施工する技術が足りないばかりに、ユニットバスであきらめさせられるのだとしたら、お施主さんにとっても残念なことです。ほんの20年前までは、当たり前につくられていたものでさえ、今では、特別なことになりつつあります。