------------------  投資対象としての建築家


「個人・個性の時代」という風潮に重なるように、株の個人投資ブームと時を同じくして、住宅を建築家に設計依頼することが、一般的になったように感じます。むしろブームともいえるかもしれません。
住宅を手に入れる前に設計料という先行投資をして、満足のいく家や資産価値の高い建物を手に入れるのですから、設計依頼は一種の投資であり、建築家は投資対象と見ることもできます。
我々が、施主の依頼(投資)に応えるのは、コンセプト・実績・評価・組織などに裏づけされた建築家のポテンシャルと、「ものつくり」としての執拗さです。
しかし、テレビや雑誌に煽られたり、気軽さをクローズアップし「建築家は庶民の味方です。敷居を低くして、多くの人に気軽に設計を依頼してもらうことが大切です。」という態度をとる建築家もお見受けするようになりました。まるで、ホリエモンです。
需要の裾野が広がることは必要です。しかし、建築家との家づくりは一品生産でキャパシティーは限られているのですから、それが行過ぎると弊害が多くなります。
「所詮、施主は仕事や実績から建築家の優劣を判断出来ないのだから、有名で敷居の低いことが仕事を得ること。」と考えるようになったら、建築家の存在もアヤシイもので、自らの職能と社会の期待に背いています。
建築家はタレントの一面もありますが、「ものつくり」でモノに対しての責任が全てです。

そこを見失うようでは、建築家ブームもホリエモンと同じ道をたどるのでしょう。