------------------  修繕をとおして


昨日、私が設計監理して、竣工後5年経った住宅にお伺いしました。
5年経っても、とてもきれいに住んでいらして嬉しくなりました。
お伺いしたのは、この秋、海外から娘さんがお帰りになって同居されるということで、建物の傷んだ部分の修繕でした。もちろん、建物の基本的な部分では問題は無いのですが、5年ほど経つと、細かな修繕が必要な部分も出てきます。
間仕切りガラス、風呂の扉廻り、壁の珪藻土、等・・・、それぞれ5年ほどで痛んでしまったのには理由があります。お施主さんに「我が家は、試作品だし・・。」と冗談交じりにたしなめられましたが、設計や現場での工事の時に、「こうしておけば・・・」と悔やまれる部分もありました。
そして、この様な修繕から得ることは、我々のとても大切な経験になっています。


家具や工業製品は工場で生産する前に必ず「試作品」の検討を経た上で製作されます。「試作品」を使ってみたり、壊してみたりして、デザインや図面の段階で想像しなかった不具合を洗い出していきます。
しかし、建築には「試作品」が無いので、失敗や不具合を回避する為には、今までの経験や勘と知識や知恵を総動員して、あらゆるシミュレーションをしながら考えるしかありません。
「失敗は成功のもと」「失敗から学ぶ・・・」といいますが、人様の大切な建物で失敗をするわけにはいきません。しかし、正直なところ、何度か痛い目にあったこともあります。
昨年から自分の設計した家に住んでいますが、これは唯一、失敗の許された建物です。幾つか実験めいたこともして、思惑どおりにいったところもありますが、やはり多少の失敗もあり、これも貴重な経験になっています。


そして、私が学んだことは・・・。
①合理的に、素直に考える。
デザインも使い勝手もディテールも無理したもので良い結果が得られた試しはありません。
②集中して、反復して考える。
建築は、物を造る(=結果を出す)ので、「保留」は無く、必ず「判断」が求められます。「判断」する為に、どれだけ集中して、想像力たくましく、あらゆるシミュレーションを考え抜いたかがとても大切です。もう一歩踏み込んで考えたか考えなかったか!