------------  建築家紹介ネットワーク


この頃、TVや雑誌で「建築家」がはやっていますし、以前に比べれば、建築設計事務所の敷居が低くなり、住宅の設計を建築家に依頼するのが特別なことではなくなってきました。多くの人が、自分たちの生活の為に、自分たちにあった家を持てるチャンスが増えたことはとてもよいことだと思います。それに伴って、特にインターネットを中心にして、建築家を紹介したり、住宅設計コンペをコーディネートする媒介も登場しました。
そんなネットワークのひとつから「我々のネットワークの登録建築家になりませんか?」とお誘いを受けました。


説明をお聞きしましたが、「施主は、入会金3万円をネットワークに支払うと、登録建築家の中から1社あるいは何社かと気に入るまで打ち合わせをして、基本設計(間取りや建物の形・仕上げを決める)をまとめることができる。基本設計が終わった段階で、設計事務所と設計契約をする。」という概略でした。

設計には色々な段階がありますが、私は、施主の色々な要望を整理したり、カウンセリングをしたり、敷地とのあり方を吟味しながら、建物の形を考えていく基本設計の段階を大切に考えています。基本設計をまとめるまでに、模型を幾つも造りながら検討や打ち合わせを重ね、設計監理業務の中で相当な労力を基本設計に費やしています。
設計監理料に対しては色々な考え方がありますが、私の事務所に直接ご相談に来るクライアントに対しては、基本設計の大切さをお話して、設計着手金を頂いています。基本設計着手時に報酬を頂くことで、私の仕事に対する責任も明確にしています。ホームページにも「設計監理料の考え方」として説明しています。

かたや、建築家紹介ネットワークの考えるのは「基本設計は無償で何案でも」、しかも基本設計料は成功報酬的な扱いで、基本設計に係る我々の労力を軽視しています。

基本設計を大切に考える、私の事務所のスタンスとは相容れないので登録をお断りしました。



もう一点の問題は、この様な紹介システムに登録する建築家・設計者に対する基準が明確でない事です。
日本建築家協会の登録建築家として認定されるには、ある基準に従った審査を経て、継続的な学習(CPD)を重ねなければなりません。建築士会連合会の専攻建築士も、同じような認定制度です。しかし、殆どの建築家紹介システムは、登録を審査する体制や、継続的な学習(CPD)を課していません。何を以って、建築家紹介ネットワークが、優れた建築家・設計者として紹介するのでしょう・・・?
紹介する建築家に対する審査や基準がない以上、建築家紹介ネットワークは、単に、右から左へ情報を流すだけの商売です。

住宅を検討する方も多少の勇気を出して、建築家協会の登録建築家や、建築士会連合会の専攻建築士などの情報を見ながら、自分で個々の設計者にアプローチしてみるのが、自分たちに相応しい住宅を手に入れる第一歩です。