二重円の都市構造

松本都市デザイン学習会という、都市デザインやまちづくりを考える会で、都市やまちに興味がある色々な分野の人が集まって活動しています。現在は「21世紀の城下町松本」をテーマにした連続講座を開くべく準備を進めています。昨日も、夕方からメンバーが集まって口角泡を飛ばしながら議論しました。傍からみていると、まるで喧嘩でもしているようです。
その中で、城下町の都市構造の話題になりました。松本は城下町で、都市の中心に、松本城と外堀に囲まれた本丸庭園があります。観光客が訪れたり、たまにイベントが開かれたりする以外は、なんのアクティビティーも持たないヴォイド(空隙)空間です。その空隙に何の意味があるのか?議論しているうちに、このヴォイド(空隙)空間は、為政者の権力の象徴であった歴史以上に、都市構造として重要な意味を持っていたのではないかという事に気づきました。

もし、このヴォイドが無ければ、左のダイヤグラムの様に、都市の中心部の各拠点は、360°全方向と応対しなければなりませんし、中心部の混雑は大変な事になってしまいます。右のダイヤグラムが都市の中心にヴォイドを持つ都市構造ですが、中心部の各拠点は、180°の角度との応対で、動線も限られる為に、都市中心部の混雑も緩和されます。
この様な二重円の都市構造は、東京(皇居)、京都(御所)を始め日本の各地に見られますし、パリ(リュクサンブール)、ウィーン(リンク)も然り、絶対権力が無かったニューヨークにもセントラルパークという巨大なヴォイドが組み込まれました。
都市のドーナツ化、中心の空洞化と言われますが、360°全方向に注意を配る事が不可能な人間行動パターンとして、中心部が欠落するのは自然の成り行きで、古くからの都市は、わざわざ都市の中心部をある一定の大きさで空洞化させたのではないでしょうか?
自然界では、台風が中心に目を持っていますし、ドーナツやシフォンケーキも二重円です。建築の設計でも、プランが正方形に近くなると、中心にボイドや回廊を廻して、アクティビティーや空間をコントロールします。
まだまだ検証不足で仮説の域を出ませんが(あるいは勉強不足)、二重円の都市構造は「21世紀の城下町松本」を考える上で、重要なポイントになりそうです。