家具、素材、エリック・オーエン・モス


家具選びといえば、誰もが皆、悩んだ経験があるし、家や建物が出来た時に楽しみな事のひとつです。事務所の打ち合わせ室の家具も随分と悩みましたが、選んだ視点は「素材」でした。
私の事務所はローコストです。外壁はガリバリューム鋼板のサイディング。製図室のインテリアはラーチ合板。中庭の階段はスチールとグレーチング。2階のデッキは多少奮発してイペ。実に様々な素材を、そのまま仕上げとして使っています。
  
素材に関していつも意識しているのが、エリック・オーエン・モス。デ・コンストラクションの巨匠のひとりですが、彼の建築の素材は多彩です。コンクリート、レンガ、石、タイル、鉄板、トタン板、鉄筋棒、無垢木板、べニア板と様々な素材がグチャグチャに使われているのですが、力強くて飾らない落ち着きがあります。

今回の打ち合わせ室は、床はコンクリート、壁は白ペンキ、天井は杉板、ラーチ合板の本棚には本がグチャグチャに詰め込んであります。エリック・オーエン・モスの建築にありそうな、多彩な素材感に溢れた雑然とした力強さと飾らないイメージです。こんな滅茶苦茶なインテリアに、建築家の事務所にありがちな、Yチェアやアントチェアは似合いそうにありません。荒っぽい木や何気ないスチールの脚の家具をイメージしていました。

ところが、東京の現場に通う度に、イタリアンモダンからセレクトショップまで色々な家具屋を廻るのですが、なかなか思い通りのデザインの家具がありません。シンプル過ぎたり、デザインしすぎていたり、高かったり・・・。
そんな時、ミッドタウンで展覧会を見た後に立ち寄った「イデー」で新作の家具を目にしました。何気ないスチール脚に布張りの座、デザインしすぎないラウンドした荒い木目の合板の背。座ってみると固めのクッションにラウンドした背もたれが肘掛にもなります。机も節有りの7枚剥ぎのホワイトオークの天板に椅子と同じデザインのスチール脚。飾らない感じが、雑然とした打ち合わせ室に似合いそうで、即注文。
 
椅子は事務所移転と同時に手元に届いたのですが、机は遅れて今日届きました。
早速、エリック・オーエン・モスの作品集と一緒に記念撮影です。