デザインの引き出し

アパレルデザイン学校でデザインを教えたり、建築の学生の課題にアドバイスを求められたり、勿論、建築の設計をする中で、お施主さんと打合せしながら・・・この頃、意識するのが「デザインの引き出し」。

アパレルデザイン学校で、デザインを教えていますが、私は、アパレルに関しては門外漢ですから、衣服のデザインのアドバイスや、一般的なデザインの解説には、自ずと衣服以外からアプローチする事が多くなります。建築・絵画・彫刻・グラフィック・音楽・社会の流行・文化・生活・テクノロジーetc・・・。
学生の倍以上の時間を生きて来ましたから、学生より遥かに多くの、デザインにアプローチする様々な引き出しを持っています。何かのイメージを伝える時に、彼女達が解らなそうにしていたら、数ある引き出しの中から別の引き出しを開けて、デザインの解説や視点をアドバイスしています。これで解らなかったらこの引き出し、これでもダメなら次の引き出し・・・。そんな授業を通して、彼女達に「デザインの引き出し」を増やして欲しいと願っています。

そして、「デザインの引き出し」で、もうひとつ大切だと感じている事。
ある引き出しを開けた時、そこに求めるものが無かった時、あるいは更にイメージを広げたい時・・・別の引き出しを開ける事ができるか?数ある引き出しが、相互に関連して、色々な引き出しを開ける事が出来るか?
年齢を重ねれば、誰しも、引き出しの数だけは増えていきます。しかし、デザインを思考する際には、全く違うように見える別の引き出し同士を関連付ける、柔らかなイマジネーションが大切だと感じています。ひとつの命題に対して、ひとつの引き出ししか開ける事が出来なかったら、デザインを展開する事は出来ません。ある命題やコンセプト(コンセプトのかけら)に対して、関連づいた引き出しを次々に開けて、そこにあるイメージを複合的に重ね合わせて展開出来たら、新しいデザインにたどり着く事が出来ます。
どんな時に、どの引き出しを開けるか・・・其々の引き出しにどんなインデックスをつけるかが、其々のデザイナーの思考であり個性になるのでしょう。

尤も、デザインに限った話ではないでしょう。イメージが豊か・・・と感じる方に出会う事があります。そんな方達には、引き出しの数・・・それ以上に、引き出しを開ける力を感じます。
そんなイメージ豊かな人の一人「五味太郎」・・・この人の頭の引き出しはどんなになっているのか覗いてみたいと思います。ほんの一部ですが・・・息子の愛読書「ことわざ絵本」。我が家では尊敬の念を込めて、「ゴミタロサン」と呼んでいます。


(著者:五味太郎  発行年月日:1986年08月08日  出版社:岩崎書店  ISBN/雑誌コード:4-265-80037-8 「ことわざ絵本」より引用)