なんとなく

お昼ごはんを食べながらのNHK「スタジオパーク」・・・今日のゲストは、朝ドラ「ゲゲゲの女房」の音楽を担当している、窪田ミナさんという作曲家の女性でした。茶髪で少し幼い感じのしゃべり方をする華奢な方ですが・・・インタビュアーの「何故この仕事を続けていられるか?」との問いに・・・
それは今まで「なんとなく」をして来なかったからでしょう。作曲した曲で、説明出来ない事はしてこなかった。演奏する人達に、何故この音が必要なのかの理由を全て説明できた。「なんとなくこの音」「なんとんくこのフレーズ」という態度は取った事が無いし、それがイギリス留学で得た一番の財産です。だから、今でもこの仕事を続けられています。」・・・・流石にいい仕事をする人は、しっかりしています。

この頃、建築であったり、工芸であったり、料理であったり・・・「ものつくり」と言われる人たちの発言や作品に、物事を掘り下げずに「なんとなく」の感性をチラツカス事が多いのに辟易としていました。デザインに関わる若い人から「それ、可愛いい・・・」という言葉を聞く度に、頭を抱えていました。それだけに、一見頼りなさそうな彼女から、そのような話を聞けて、嬉しくなりました。

私は、芸大出身で、世間一般からすると「なんとなく」という言葉で表現される、「感性」に頼って仕事をしていると思われがちです。しかし、当時の芸大で教えられたのは「頼りない感性」「なんとなく」の否定でした。仕事を覚えた、曽根さんの事務所でも「それは、どうして、そうするのだ!」の毎日で、自分がしている設計全てに対して、徹底的に理由を問われました。「なんとなく」などと言おうものなら「20年早い!」と一蹴されました。
今でも、同じ態度で仕事をしているつもりですし、設計の内容全てを、職人さん達にも説明できます。私の事務所のスタッフにも「なんとなく」を否定し続けて来ました。それが建築のリアリティーに繋がっていると確信しています。


しかし、先日、飲んだ席で、東工大出身の建築家に「芸大の知性に対するコンプレックスがそうさせているのでしょ。そろそろ、感性にも素直に従ってみたら?」と指摘されて、どこかで納得していました。
・・・・・「20年早い!」と一蹴されてから、20年経ちましたし(笑)

先ほどの答えに続く、インタビューの最後でも、窪田ミナさんが同じ事を言っていました。
「・・・しかし、今になって「なんとなく」が必要になって来ています。」