大勢が暮らす家

何故か?
私に設計を依頼される方は、2世帯住宅であったり、お子さんが多かったりで、比較的大勢で暮らす家が多いのを感じていました。ホームページに掲載している住宅、1件当たりの居住人数の平均を出してみたら、4.5人でした。
ちなみに、全国の1世帯当たりの平均居住人数、2.65人(平成19年版労働白書)です。松本市の平均は意外に少なく、2.55人でした。長野市も2.68人。
尤も、この統計には、単身者世帯も入っていますから、我々に設計を依頼する世帯とは単純比較はできませんが、私の事務所に住宅を依頼される方の平均、4.5人・・・ご夫婦と2人以上のお子さん、あるいは、ご夫婦とお子さんとおじいちゃん、おばあちゃん・・・現代では大家族と考えてよいでしょう。
現在設計中の住宅も、30代ご夫婦と、小学校1年生を筆頭に3人のお子さん=5人がお住まいになります。

単身者・二人暮らしの家でしたら、生活も単純ですから、シンプルな家をつくる事は比較的簡単に出来ます。

しかし、大勢が暮らすとなると、世代が違う人が何人も同居するのですから、お互いの関係により、自ずと複雑な家になりがちです。そんな条件の中で、シンプルで心地よい家を作るには、複雑になりがちな関係を整理して、プログラムを組み立てる必要があります。この頃では、社会性やプログラムをあえてオミットしてつくるスタイリッシュな家も見かけますが、それは私の仕事では無いと思っています。
住宅の設計というと、狭い意味でのデザインに目が行きがちですが、実は、関係性のプログラムこそが、住宅も含めた建築設計の第一歩です。

私が、住宅以外にも携わっている、都市デザインや公共施設・商業施設・オフィス・レストランなどの設計には、色々な社会性を考えながら、プログラムの組み立てる事が不可欠です。そんな経験や社会性が、住宅という小さな社会ですが「大勢が暮らす家」の設計に役立っているのだと思います。

それから・・・私自身、夫婦と3人の子供、私の両親の7人で暮らしています。子供の頃や学生の頃に夏休みを過ごした山小屋は、大勢のスタッフやお客さんと一緒。東京の事務所に居た頃は、毎週のように世代の違う先輩や後輩たちと海やスキーへ。現在、講師をしているデザイン学校でも、20歳以上離れた学生にからかわれながら教えています。
そんな、世代や分野の違う多くの人と交わっているのも、「大勢が暮らす家」、建築の社会性を考える上で、とても有難い事だと感じています。