------------  つくりすぎない家


この頃、建築家に住宅設計を依頼するのも、随分と一般的になってきました。建築家の設計に何を期待するのかも様々です。斬新なアイデア・心地よい空間・オシャレなデザイン・自然素材の活用・気配りの行き届いたディテール・適所に配された収納で片付く家・etc、自分達のライフスタイルに相応しい家に思いをめぐらし、今の生活とは違った、新しい生活を夢見て楽しみにしている事でしょう。
我々も、他の建築家の設計した家をみせていただきながら、互いに刺激を受け切磋琢磨しています。一年に10件以上の住宅を見学させていただくでしょうか?建築主と打ち合わせを進めながら間取りを考え、素材の選択、細部のデザイン、いたるところに工夫を凝らした美しい家をみるのは楽しみです。建築に関する本や雑誌もたくさん出版されて、誌面にあふれるいろいろなアイデアやデザインも刺激になっています。

しかし、工夫され美しくデザインされた建築なのですが、自戒の念も込めて、どこか何かが違うと感じています。
その答えのひとつが、ここにあるように思います。

この2冊に共通していることは「町」「生活」「間取り」「つくりすぎない家」、いずれも、私が設計するときに大切にしている事で、設計を進めながら、何かに行き当たったときに、この2冊をめくります。吉田桂二さんの設計は和風建築で、私の設計している住宅とは、違うかに見えます。しかし、私は、その建築に流れる「おおらかさ」に少しでも近づきたいと思っています。そして、吉田桂二さんは、「住み手のちから」を信じて、家をつくりすぎないことを大切にしています。これをきちんと語る建築家は少ないのですが、私は、「つくりすぎない家」、これが住宅建築で一番大切なことのひとつだと思っています。
吉田桂二さんとは、一晩親しくお酒を共にさせて頂いた事がありますが、実に豪快でわかりやすく物を言う方でした。設計した家にお邪魔したこともありますが、飾らずおおらかな家でした。

建築家に住宅設計を依頼したいと思う方は、相談に行く前に是非、この2冊を手にとってみてください。
「つくりすぎない家」・・・・今まで考えていた建築の見方が、少し変わるかもしれません。