--------------  加山又造展


先週末、長野市に所用があった折、水野美術館で開催中の「加山又造展」を見てきました。

加山又造は、戦後を代表する日本画家です。私が始めて加山又造の絵を意識したのは、10年以上前、東京で行われた個展で鶴の絵を見た時です。絵の題は忘れましたが、何羽もの鶴が何かに驚いたように一斉に首を伸ばして同じ方向を見ている絵でした。鶴の視線の先は描かれていませんでが、画面をはみ出してその視線の先にある空間も感じ取ることが出来ました。絵に描かれた空間・そして絵の先にある空間・時間が凍ったような一瞬を切り取る感覚・・・それ以来、加山又造の絵が大好きです。



今回の回顧展は、加山又造の足跡を時代と共にたどりながら、各時代での作品の変遷を解説しています。その中でもやはり圧巻なのは、昭和50年代60年代の琳派水墨画を見直しながら描いた屏風絵の数々でした。日本画の型にはまりながらも、そこに新しい技法を加えながら、スケールが大きく広がる世界を描き出しています。

「月光波濤」 1979 紙本墨画
月の光に照らし出された白い波頭が砕け散る瞬間・背後に広がる広大な海、一瞬の時間が切り取られます。

「おぼろ」 1986 紙本彩色
妖艶なしだれ桜とおぼろ月に拡がる淡い空間。

建築という空間や時間を意識する仕事をしていますが、加山又造の作品からは大きな刺激を受けます。華やかな世界を展開しながら清楚な潔さを併せ持ち、これほどに時間や空間を感じる絵は加山又造ならではの世界です。



水野美術館での巡回展は先日終了し、今週末からは、富山県水墨美術館に場所を移します。