------------------  ○○士の仕事


本来、○○士と言う専門家は、専門家としての知識と倫理観を持ち、第三者として公平性や中立性に基づき、エンドユーザーが自らの為に委嘱し、エンドユーザーの利益を守る仕事をする人たちです。弁護士、会計士、建築士…。
ここで重要なのは、「エンドユーザーが自らの為に委嘱し」の部分です。
宅建設の場合、設計監理は建築士に直接依頼し、工事は工務店に依頼したほうが、本来の建築士の役割を引き出せます。
ハウスメーカーの設計施工の場合、建築士ハウスメーカーの利益の為にハウスメーカーに委嘱されている、ということをお忘れなく。勿論、打ち合わせを通して、自分達の希望や夢を形にはしてくれますが、建設費など会社の利害にからむ問題では、ハウスメーカー建築士はこちら側の人では無く、建設販売側の人です。
訴訟に例えれば、相手方には弁護士がいるけれども、こちら側には弁護士がなく、相手側の弁護士の主張を鵜呑みにするしかない、という状況です。これでは喧嘩になりません。
専門家は、「エンドユーザーが自らの為に委嘱し」た場合において本来の機能を発揮します。(これが昨日書いた②のケースです。)


ここまで書いて、気がついたのですが、これから、我々のところに建物の安全やデザインに関して「セカンドオピニオン」を求める依頼主が現れるかもしれませんが・・・。
最低限の安全に対しては、建築確認審査会社が正常に機能すれば、クリアできる問題なので、この点に関して「セカンドオピニオン」は、本来必要ありません。この見地から、構造計算偽装を建築確認審査機関が見落としたのは大きな問題です。見落とした事も問題ですが、今回の事件で教訓にすべきは「補償能力の無い者のお墨付きはお墨付きにならない。」ということではないでしょうか。「官」の建築確認審査機関でしたら補償能力があります。「民」の建築確認審査機関の「お墨付き」にも保険などで補償能力を確保するべきです。(12/1一部加筆)
(ちなみに、私が設計した建物に関しては、万一の設計瑕疵にも経済的責任を負えるように、日事連・建築家賠償責任保険に加入しています。これから設計を依頼しようと思う方は、少なくとも設計者にこれを確かめたほうが良いと思います。)

デザインに関しては、患者の症状と治療の方法の様に、ある程度方向性や目的が定まる問題ならば「セカンドオピニオン」も成立しますが、住宅のプランやデザインは全く自由です。一部分を取り上げて良いデザイン、悪いデザインと言える問題ではありませんし、打ち合わせの中から組み立てていくべきもので、その方向を定める事こそが設計です。

コストに関しても、全体のバランスの中から、目標の総工事費を導き出せば良いので、見積書の数字ひとつひとつをチェックしても、あまり意味がありません。

以上の様に、残念ながら、建築には「セカンドオピニオン」は成立しません。