------------------  構造計算偽装はトカゲのしっぽ


構造計算偽装事件、渦中の建築士は言語道断で話題にするにも及びません。
彼は「トカゲのしっぽ」で問題は別にあります。
地方都市でも、毎週、土曜日の新聞折込ちらしにマンションの宣伝が幾つも入ってきます。マンション販売業者は自分達の販売するマンションがいかに豪華で便利で価格が安いかを競っています。
消費者は、柱や梁の建物の構造で手抜きをして、建物の価格を抑えているとは考えも及ばなかったのでしょうが、実は価格競争は建物の構造にまで及んでいたというのが今回の事件です。


仮に、マンションの建築費が、コンクリートの骨組みに坪20万円、外装のタイルや内装の仕上げに坪20万円、電気や水道や浴室やシステムキッチンやセキュリティー等の設備に坪20万円、必要だとします。目標価格は坪55万円だとすると坪5万円足りません。外装・仕上げや設備はマンションの販売に影響を及ぼすので、販売業者は、設計者に対して、販売に影響の少ない骨組みを坪5万円安く造ることを要求するでしょう。
「今回予算が厳しいので、坪15万円を目標に構造を工夫してください。」という理不尽な要求に対して、設計者が違法行為を以って応えた、というのが事件の背景でしょう。
設計者は、販売業者の要求に対して、「それは不可能です」と答える事もできたはずですが、それは仕事を断ることを意味します。建築士など掃いて捨てる程いますから、違法行為を以てしても販売業者の要求に応え仕事を得ようとする設計事務所は他にもあるでしょう。
その様な設計者を、販売業者は「トカゲのしっぽ」程度にしかみていません。また、建築士の名義貸しという「トカゲのしっぽ」もあります。


我々建築士が職業倫理を大切にすることは勿論なのですが、それは個々人の問題で、全国に約30万人いる一級建築士の中には色々な人がいます。依頼主である販売会社の倫理観も様々です。確認申請をチェックする側も節穴だったとすると・・・。
「マンションの低価格販売合戦は違法行為が出るほど過熱している」と今回の事件を冷静にとらえ、消費者の側も意識を変える必要がありそうです。

兄やんさんも書かれているように建物のタイル貼りやエントランスの石貼りに目を奪われず、自分の感覚を以てして、不動産とその価格について分析することが必要です。
例えば、「同じ価格だったら、仕上げや設備が豪華な建物よりも、簡素な建物の方が、構造やデザインがちゃんとしているはず?」という物の見方もあります。