------------------  ヤニ松


現在進行中の現場「chanoma」工事も大分進んで、これから室内の造作に入っていきます。
今回は施主の要望でカラマツ板のフローリングにしました。悩んだのが玄関框の樹種。広葉樹(なら・さくら・かりん等)のフローリングでは、迷わずフローリングと同じ樹種の玄関框にします。カラマツのフローリングにはカラマツの框?
適材適所という言葉がありますが・・・玄関框の役割は玄関の段差部分をカバーするフローリングの見切り材です。毎日家族の足で踏まれつつも、傷にならずにお客様をお迎えする玄関の顔として存在する必要があります。目の詰んだ天然カラマツなら、玄関框としての堅さと風格をそなえていますが、ぬくぬくと育った現在のカラマツではとても玄関框には耐えません。
設計時点では考えつかずに、「なら無垢」と書いて予算だけは確保しておきました。現場が進む中で、工務店の方に相談しながら、玄関框の樹種を選びなおしました。工務店の方が持ってきた見本は「ヤニ松」。恥ずかしながら、「ヤニ松」にお目にかかるのは初めてです。赤塚不二夫の「おそ松」とは関係なさそうです。
松は針葉樹の中では、比較的硬く、造作にも耐えますが、しばらくすると松ヤニが出て始末に負えません。普通では框にはつかえませんが、ヤニ松は松の古木で、松ヤニが木の中で固まった木です。ヤニ=天然樹脂で固められているので、爪も立たない位に硬い木です。普通容易に手に入る材料ではありませんが、工務店の倉庫に眠っていた材料を出してくださいました。木目の雰囲気もカラマツのフローリングにぴったりです!これに決まりです!
建築家といっても大したことはありません。所詮建物を年に数件設計して、現場監理するだけです。それに比べて工務店の経験をつんだ現場監督、ベテランの大工さん、材木屋さんは、我々よりもはるかに多くの数の建物に触れています。「ヤニ松」だけでなく、私の知らない事をたくさん知っています。それら先輩たちに、かわいがってもらえると、設計図以上の建物になっていきます。40才を過ぎて、いつまでも「かわいがってもらう」歳でもありませんが、いつも素直な気持ちで仕事に向かいたいと思っています。

ちなみに「おそまつ君」の6人兄弟は、
「おそ松」「ちょろ松」「一松」「から松」「トド松」「十姉松」だったと思います。